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BABEL

今なおこの世界は人間にとって過酷な場所です。

なるほど先進国は文明を築き上げました。
法を築き、商取引習慣を築き、建物を築き、
通信・交通手段を築き、ありとあらゆる
人工物を築き上げました。そうしてこの世界を、
ある程度の予測可能な安定したシステムに
変えてゆこうとしてきました。

グローバリゼーションが喧伝される今、
そのシステムは完成の域に達しているとも
思われがちです。(英語と米ドルと
インターネットはユニバーサルだと思っている
人も少なくないでしょう)。

ですが時にそのシステムの周辺部で、あるいは
その真ん中で、綻びが生じます。その綻びから
システムの外に放り出された時に、人間は
いかに脆いか、弱いか、愚かか。

私たちはこれからもシステムをより広範囲に、
そして綿密に発展させようとするでしょう。
それが文明なのですから。

しかしどんな文明システムとて、この世界は
包括できない。完全制御はできない。

となれば私たちは一方で高度なシステム化を
進めながらも、他方で、お互いの脆さ、弱さ、
愚かさを常に忘れず、それらと共に生きる
術を学んでおかなければならないのでしょう。

単純に言い切るなら、完全なコミュニケーション
と完璧な制御に守られたバベルの塔は存在しない。
人間はバベルの塔に住むことはない。

それならば人間は理解不可能な事態そして他者と
共に生きることを学ばなければならない。

それこそは、映画でブラッド・ピットが
ケイト・ブランシェットに示しえたこと。
(そして通訳役がブラッド・ピットに示しえたこと)。
あるいは役所広司が菊地凛子に示しえたこと。

過酷な世界の中に住む私たちの根源こそは「それ」なのです。

私はこの映画、好きです。

http://babel.gyao.jp/

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コメント

このゴールデンウィーク中に私も、高校生の娘と娘の友人とでこの映画を見ました。見終わった後、何か重いものが胃の上に乗っかったような感じでした。高校生の娘達にはピンと来なかったようで、「1500円損したぁ~」「200円くらいだったよぉ」などと言いながら雑踏の中へ消えていきました。一人家路についた私。

>システムの外に放り出されたときに、人間はいかに脆いか、弱いか、愚かか。

まさに、そのことをつきつけられた映画でしたね。

でも、日本人が銃を持って中東にハンティングに行くかな~?とか、いくら子どもとはいえ人の乗っているバスに向かって試し打ちするかな~?とか、その他諸々気になった部分もあり、私は中途半端な感じを受けてしまいました。

投稿: ヨーコ | 2007/05/10 18:51

ヨーコさん、こんばんは

別にBABELを弁護する立場にあるわけでもないのですが、日本人がモロッコでハンティングをするか、ということですが、都心であのようなマンションに住める超エリートサラリーマンなら、あのくらいはすると思います。

あと子どもですが、日本でも列車(汽車)に石を投げつけて乗客に怪我をさせる子どもはいましたよね(少なくとも私は、そのようなことをするな、という内容の啓蒙映画を見せられた覚えがあります)。

というわけで、私はあの映画、好きです。

でもミクシィでのレビューは「わからない」「むずかしい」というのが多いみたいです。
これについて詳しく書きたいのですが、時間がないので、また機会があればということで。

投稿: イワン | 2007/05/10 21:56

今思い出しました。
左遷の末とはいえ、アフリカでハンティングに興ずるエリートサラリーマンの姿を描いた実話に基づく小説に『沈まぬ太陽』がありましたよね。山崎豊子の作品です。

投稿: イワン | 2007/05/10 22:06

イワンさん、こんにちは

そうなんですか・・・一般的な日本人である私には銃というものがピンときませんでした。それが、このストーリーの発端となったことが違和感を感じた理由だと思います。
また、石ころを投げるのと銃を撃つことは彼ら(子ども)にとっては同じ感覚なのでしょうか・・・その辺は私にはわかりません。
他の方たちの感想も聞いてみたいですが、私の周りにはこの映画を見た人がいなくて、その日も映画館はガラガラでした。

投稿: ヨーコ | 2007/05/11 17:23

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